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 AKB48グループでは、卒業生が様々な形で芸能活動に携わっているが、今回のように大々的に芸能界を引退してからの復帰はまれに見るケースだ。『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者であるライターの香月孝史氏は、今回の動きをこう分析する。

「ちょうど9月9日にSKE48のドキュメンタリー映画『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』がDVDでリリースされましたが、同作ではグループの歴史をたどりながら、最初期メンバーと卒業メンバーの言葉を、並列に同じ重さで映していました。それは、在籍しているかどうかにかかわらず、ある時期をSKEとして過ごした人の現在生きている姿を肯定するものであり、ファンからは『卒業後、自分たちが見ることのできなかった“一人の女性としての人生”を目撃できたこと自体は嬉しい』という意見も多くみられています。そういう意味で今回の復帰もある種、3人からファンに向けての報告のような意味合いが強いでしょう」

 今回の発表から一夜明け、ファンの反応がさまざまなことについて、同氏はこう続ける。

「SKE48の歴史を辿ると、同グループはファンにとって納得しにくい卒業が多かったという一面もあります。その最たるものが2013年に9名が大量卒業した出来事であり、今回のイベント発起人である桑原に加え、ファンと再会を果たした矢神・小木曽はいずれも同タイミングで卒業したメンバーです。とくに桑原は卒業発表以降、グループに属することを否定する発言などが目立っていたため、ファンが複雑な感情になることは、理解できる部分もあります」

 また、矢神・小木曽が芸能活動再開を発表したことについて、香月氏は「それも模索のひとつ」と述べた。

「彼女たちはまだ20代も前半であり、このくらいの年代であれば、芸能活動ができそうかどうかという判断がその時々の状況によって変わりやすい。とくにAKB48グループが元来『自分のキャリアを模索する場所』であり続けているため、この先の人生を一般人として永久的に歩んでいくという選択ではなく、舞台にもう一度戻ると決めたことについては、グループが大きくなり、長く続いたがゆえの『模索のひとつ』と受け止めるのが健全なのかもしれません」

 最後に、今回のイベントがSKE48だけでなく、AKB48グループの卒業メンバーに影響を与える可能性について、同氏はこう語った。

「今回はSKEの現役メンバーを絡めているわけではありませんが、AKB48グループは『リクエストアワー』で定期的に過去の卒業メンバーを登場させたり、12月6日には都内で『AKB48劇場オープン10周年祭』が行われ、前田敦子や大島優子、板野友美に篠田麻里子らといった卒業生の出演も決定しています。これらの動きに関しては、グループの歴史を当事者たちが体現するというプラスの意義もありますが、一方で卒業したメンバーがその後の活路を見いだせるかどうかは「いかにして48グループの色から脱するか」にもかかっているといえます。前田や大島のように、グループの色を上手く脱色し、女優としてキャリアを着実に積み上げているOGにとっては、『AKB48の大島優子』というイメージをもう一度増幅させてしまうというマイナスもあるので。ただ、AKB48が節目の年であることから、今後も同じような取り組みが増えることは予想できますし、ほかグループも卒業メンバーを再び呼び寄せるということは増えてくるのではないかと考えられます」

 グループが年月を重ねるたび、卒業メンバーの数も増えていくが、それぞれがどういう道をこれから歩むのか、進路はさらに多様化していきそうだ。 


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